鼻の病気

鼻とは?

私たちの鼻は、呼吸をする際に空気が通る「呼吸器」の機能や、においを感じる「嗅覚(きゅうかく)」の機能に加えて、空気中のホコリやウイルスなどが入ることを防ぐ「フィルター」の機能や、肺や気管を守るための「加湿・加温」の機能も持っています。
鼻は「鼻腔(びくう)」と「副鼻腔(ふくびくう)」の大きくは2つから構成されています。

鼻の構造と役割

  • 鼻腔(びくう)
    空気の通り道としてトンネル状になっており、鼻腔の真ん中には「鼻中隔(びちゅうかく)」と呼ばれる骨が左右の鼻腔を仕切る壁となっています。左右それぞれの側壁には3つのヒダ状に隆起する骨「鼻甲介(びこうかい)」が存在しており、上から下に行くほど隆起が大きく、上から上鼻甲介・中鼻甲介・下鼻甲介と呼ばれます。
    また、鼻腔上部の「嗅粘膜」は、においを感じ取るセンサーの働きをもちます。
  • 副鼻腔(ふくびくう)
    鼻腔と繋がっている左右対称に4対ずつ(計8個)ある空洞です。額(前頭洞:ぜんとうどう)、鼻の横(篩骨洞:しこつどう)、頬(上顎洞:じょうがくどう)、鼻の真裏(蝶形骨洞:ちょうけいこつどう)に存在します。
    副鼻腔は、呼吸による空気の交換や鼻水の分泌・音声の共鳴などに関係しています。

鼻の症状と考えられる疾患

耳鼻咽喉科では、次のような鼻の症状や病気を取り扱っています。

鼻水

鼻づまり

急性慢性鼻炎アレルギー性鼻炎花粉症など)、薬剤性鼻炎、肥厚性鼻炎、萎縮性鼻炎、鼻茸、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎歯性上顎洞炎好酸球性副鼻腔炎、小児副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、アデノイド増殖症、鼻中隔弯曲症鼻腔異物、鼻過敏症、嚢胞(術後性上顎嚢胞・副鼻腔嚢胞)、腫瘍(鼻副鼻腔腫瘍鼻副鼻腔悪性腫瘍)、血管運動性鼻炎など

いやなにおいがする、くさい鼻水が出る

嗅覚障害鼻腔異物、鼻過敏症、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎歯性上顎洞炎好酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、小児副鼻腔炎、術後性上顎嚢胞、腫瘍(鼻副鼻腔良性腫瘍副鼻腔悪性腫瘍)、がん(上顎がん・鼻腔がん)など

においが分からない


副鼻腔炎、鼻茸鼻腔腫瘍、風邪の後の神経障害 、電解質異常(亜鉛欠乏など)、中枢性疾患(脳梗塞など)、加齢性変化など

鼻汁がのどに落ちてきて気持ち悪い(後鼻漏)、後鼻漏による咳


アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、慢性咽頭炎など

鼻の腫れ

鼻前庭湿疹鼻せつ、外鼻変形、腫瘍(鼻副鼻腔腫瘍・鼻副鼻腔悪性腫瘍・鼻副鼻腔良性腫瘍・副鼻腔悪性腫瘍)、がん(上顎がん・鼻腔がん)など

鼻や頬・額が痛い


副鼻腔炎、歯性上顎洞炎、上顎がん、三叉神経痛、乳幼児上顎骨骨髄炎など

鼻血が出る


単純性鼻出血、上顎がん、鼻腔腫瘍、上顎洞血瘤腫、鼻中隔穿孔、血液疾患、遺伝性鼻出血など

気になる鼻症状が現れましたら、お気軽に当院までご相談ください。

鼻炎


鼻炎は大きく分けて、鼻風邪の「急性鼻炎」、薬の副作用や物理的な刺激などが原因となる「慢性鼻炎」、アレルギー刺激が原因となる「アレルギー性鼻炎」の3つに分けられます。

急性鼻炎


主にライノウイルス・コロナウイルス(旧型)*1などのウイルス感染が原因となり、鼻粘膜の急性炎症を起こした状態で、いわゆる「鼻風邪」です。
*1旧型コロナウイルス:2番目に多い(約10~15%を占める)風邪の原因ウイルスで、6歳までのほとんどの子どもが感染する。鼻やのどの症状を引き起こすが、多くは軽症。
ウイルス感染に合併して、細菌感染することもあります。
急性鼻炎は、鼻水(サラサラ→ドロッとする→緑っぽい色と、性質が変化していきます)・鼻づまり・くしゃみ・鼻が痛い・発熱などの症状がみられます。
新型コロナウイルスやインフルエンザ、性感染症のように特別な治療法を必要とする疾患が疑われる場合には、ウイルスを調べる検査を行います。
治療は、鼻炎を抑える点鼻薬や内服薬などの対症療法や外来での処置、ネブライザー治療(霧状の薬剤を鼻粘膜に直接届けて、炎症を抑える治療)を中心に行います。緑っぽい鼻水が続くなど、細菌感染を起こしているときには抗生物質を処方することがあります。

急性鼻炎は、通常2週間以内に改善してきますが、2週間以上緑っぽい鼻水が続く場合には、副鼻腔炎となっている可能性があります。また、保育園などに通う小さいお子さんでは繰り返すうちに慢性鼻炎や中耳炎なども合併することが多くなります。鼻水の症状が続くときにはぜひお早めにご受診ください。

慢性鼻炎


鼻粘膜に慢性的な炎症が生じて起こる鼻炎です。
慢性鼻炎では、鼻水・鼻がつまる・頭が重い感じ・においが分かりにくい・鼻水がのどに落ちる(後鼻漏:こうびろう)・痰・咳などの症状がみられます。
※すべての症状がみられるということではありません。

慢性鼻炎の原因は様々で、はっきりした原因が分からない場合もあります。
慢性鼻炎に含まれる主な鼻炎は、次の通りです。

  • 老人性鼻炎/加齢性鼻炎
    加齢による鼻粘膜の機能低下が原因となり、くしゃみ・鼻水などを伴わないサラッとした無色透明の鼻水が現れる。「温かい食べ物を食べると、鼻水が出る」といった症状がよくみられる。鼻炎薬の効果は限定的で、ぬるま湯での鼻洗浄や足湯などの温熱療法で改善が期待できる場合がある。
  • 妊娠性鼻炎
    女性ホルモンの変化により、妊娠2~5か月以降、アレルギー反応のような透明な鼻水・くしゃみなどが出て、悪化することがある。妊娠周期に応じた治療を選択するが、原則的に胎児への影響を考えて内服薬は使用せず、点鼻薬での治療となる。
  • 血管運動性鼻炎
    アレルギー反応のような鼻水・くしゃみ・鼻づまりが現れる。主な原因は寒暖差(温度変化)で、たばこの煙・化粧品(香料)・飲酒・精神的ストレス・大気汚染なども要因となる。アレルギー反応ではないので、血管運動性鼻炎のみであれば血液検査では陽性となる抗原(アレルゲン)がみつからない。
  • 薬剤性鼻炎
    市販の点鼻薬(血管収縮薬)の使い過ぎが主な原因の鼻炎。点鼻薬に血管収縮剤が含まれている場合、1日2回2週間程度の適正使用では問題になることは少ないが、長期使用(1日3~4回以上かつ1か月以上使用)すると、逆に鼻粘膜が厚くなり鼻づまりを起こす。血管収縮剤入りの市販の点鼻薬をできるだけ早く中止して、抗アレルギー剤やステロイド点鼻薬による治療を行う必要がある。重症の場合手術がすすめられることもある。
  • 乾燥性鼻炎
    冬の時期や暖房のついた室内など乾燥した空気を吸い込むことにより、鼻の中が乾燥した状態「ドライノーズ」となる。乾燥状態になると、鼻の中の乾燥感や痛み・かゆみ・むずむず感・鼻血・かさぶたなどがみられる。マスク着用・加湿器などの生活改善や、ぬるま湯の生理食塩水による鼻洗浄などで症状改善が期待できる。
  • 肥厚性鼻炎(ひこうせいびえん)
    鼻の中に3つあるヒダのうち、一番下の大きなヒダ「下鼻甲介」の腫れにより、慢性的な鼻づまりがみられる。下鼻甲介が腫れて炎症を起こす要因にはアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、ストレス・妊娠・たばこの煙などがあるが、左右の鼻腔を分ける壁の役割をする軟骨「鼻中隔」が弯曲している病気(鼻中隔湾曲症)の合併症としてもみられる。治療は点鼻薬などの保存的治療を中心に行う。症状がひどく、鼻中隔湾曲症を合併している場合にはレーザー治療や手術が有効となる。
  • 萎縮性鼻炎(いしゅくせいびえん)
    比較的高齢者に多い。鼻の粘膜が萎縮して薄く硬くなることで鼻腔が異常に広がる。鼻の中が乾燥状態となるため、鼻づまりや大量のかさぶた(鼻くそ)のこびりつきがみられ、「鼻がくさい」と感じることがある。鼻づまりによる頭痛・目の奥の痛みの併発もみられる。今のところ、萎縮した粘膜を再生させる根本的な治療法はないが、かさぶたの形成を減らす、悪臭をなくすための鼻処置や保湿効果のあるクリーム・軟膏などの保存的治療を中心に行う。

アレルギー性鼻炎


アレルギー性鼻炎では、透明なサラサラした鼻水、くしゃみ、鼻づまりなどの鼻炎症状が現れます。人によっては、目の症状(かゆみ)やのどの症状(のどのかゆみなど)が現れます。また、不快な鼻炎症状により、思考力の低下や勉強・仕事・家事など日常生活に支障を来すことも分かっています。
原因は花粉やダニ(ハウスダスト)などのアレルゲン(抗原)が鼻から体内に入ることであり、身体が異物を体外に排出しようとするアレルギー反応(抗原抗体反応)として、症状が現れます。
アレルギー性鼻炎には、花粉症のように特定の季節だけ症状が出る「季節性」と一年中症状が出る「通年性」があります。

アレルギー性鼻炎の診断は、自覚症状や他覚所見からの総合的な判断で行いますが、鼻炎を引き起こしている原因(アレルゲン)を調べるには、「血液検査」が有効とされます。
くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの不快症状を抑える「薬物療法」を中心に行い、特に鼻づまりが強いときには、「レーザー治療」も併用することがあります。レーザー治療は花粉症の時期以外に行います。当院では、前処置をしっかりと行い、内視鏡を用いてよく観察しながら行う、痛みの少ないレーザー治療を行っておりますので、ご希望がある場合はぜひご相談ください。

なお、アレルゲンがスギまたはダニと確定している場合には、唯一の根治治療として注目されている「舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)」を当院で行うことが可能です。
3~5年間毎日1回、自宅でアレルゲンエキスを服用して、アレルギー反応を起こしにくい体質に変えることが期待できる治療です。お子さんにも治療可能ですので、ご興味ある方はお気軽にご相談ください。

  • 季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)
    季節性アレルギー性鼻炎の代表格として有名なのが、「花粉症」です。花粉症では、植物の「花粉が飛ぶ時期だけ」に症状が現れます。原因となる花粉は、スギやヒノキなどの樹木だけでなく、背丈の低い草花の花粉もアレルゲンとなり得ます。
    現在、日本国内には約60種類の花粉症が確認されています。

<花粉症の原因となる主なアレルゲン>

春:スギ・ヒノキ・カバノキ科(シラカンバ*2、ハンノキ)
夏:イネ科雑草(カモガヤなど)
秋:ブタクサ・ヨモギ・カナムグラなど

2シラカンバ:北海道や高地に多く植栽されている樹木。カバノキ科の花粉症の方は、リンゴなどの果物を食べると、口の中がかゆくなるなどの口腔アレルギー症候群(OAS)がみられることがあります。

  • 通年性アレルギー性鼻炎
    ハウスダストが原因となり、一年中アレルギー症状が現れます。
    ハウスダストは目には見えにくい小さないチリなどの混合物のことを意味しており、ダニ・ペット(犬、猫、ウサギ、ハムスターなど)の毛・フケ・昆虫の死骸やフン・真菌(カビ)などが含まれます。また、通年性アレルギー性鼻炎がある方は、気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎を合併しやすい傾向があります。

副鼻腔炎(蓄膿症)

これまで「蓄膿症(ちくのうしょう)」と呼ばれていた病気です。日本の推定患者数は約100~200万人であり、副鼻腔炎には「急性副鼻腔炎」「慢性副鼻腔炎」「好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうせいふくびくうえん)」「歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)」「真菌性副鼻腔炎(しんきんせいふくびくうえん)」などの疾患が含まれます。
主な発症原因は、風邪・アレルギー性鼻炎などによる副鼻腔の細菌感染で、雑菌繁殖や炎症が悪化することによって副鼻腔内に膿が溜まります。
その結果、濁った粘性の白~黄色い鼻水、鼻づまり、鼻や頬・額(頭痛と感じる場合も)・目(眉間)の奥などの痛み・鼻水がのどに落ちてくる(後鼻漏)・変なにおいがする・鼻がつまることでにおいや味が分かりにくいといった症状が現れます。
また、お子さんではなかなか症状を正しく訴えることが難しいケースも多いので、風邪が治った後にこれらの症状がみられたり、不機嫌・寝つきが悪い・痰が絡んだような咳が治らなかったりするときには、副鼻腔炎(小児副鼻腔炎)の可能性を疑って受診すると良いでしょう。
問診や鼻鏡・内視鏡検査による鼻内部の観察、CT検査などにより診断します。

特に真菌(カビ)や虫歯が原因となっている特殊な副鼻腔炎では、原因の特定のためCT検査が必須となります。
当院では、「耳鼻科用CT」を導入しておりますので、副鼻腔の状態を詳しく調べることが可能です。CT検査を受けずに治療されている方で副鼻腔炎の改善がみられない方は、一度当院までご相談ください。

治療の基本は、マクロライド系抗菌剤・去痰剤などの薬物療法であり、鼻の中を洗って膿を出す「鼻洗浄」、ネブライザー治療なども並行して行います。
ただし、高熱や強い目の痛み・酷い頭痛などが続く場合には失明・脳の後遺症・腫瘍などのリスクがあるので、緊急手術を行うことがあります。
※必要に応じて、提携病院をご紹介します。

急性副鼻腔炎


発症から4週間以内の副鼻腔炎です。ネバネバした白~黄色い鼻水・鼻づまりなど風邪と似た症状が現れるほか、鼻や頬周辺・額の痛み(頭痛と感じる場合も)、発熱、嫌なにおいがする、嗅覚障害(においが分からない)、鼻水・痰がのどに落ちてくる(後鼻漏)、鼻づまりによっていびきをかくなどの症状もみられることがあります。
内服薬やネブライザー治療など薬物療法により、通常約2週間~1か月で改善が期待できますが、治療を放置すると症状が長引く「慢性副鼻腔炎」へ移行することがあるので要注意です。

慢性副鼻腔炎

症状が3か月以上続く副鼻腔炎です。主な原因は風邪・アレルギー性鼻炎からの急性副鼻腔炎を繰り返すことで、体質や生活環境の影響も発症要因となります。慢性副鼻腔炎では、黄色いネバネバ鼻水、頑固な鼻詰まり、においがしない、鼻水がのどに落ちる(後鼻漏:こうびろう)、頭が重いなどの症状がみられますが、急性副鼻腔炎の症状よりも程度が穏やかな特徴があります。
とはいえ、中耳炎や慢性咽頭炎・慢性気管支炎を合併したり、鼻の中に鼻茸(はなたけ:鼻のポリープ)ができたりすることがあり、重症となると治療が難しくなったり、急に症状が悪くなって視力などに後遺症が残ることもありますので、症状が軽いからと放置せずに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
慢性副鼻腔炎ではCT検査による炎症の程度を評価することが重要です。
当院では「耳鼻科用CT」を導入しているので、自院にて詳しく調べられます。
治療は主に少量の抗生物質を2~3か月服用する「少量長期マクロライド投与療法」を中心に行い、ネブライザー治療なども併用します。ただし、鼻茸が大きかったり大量に発生したりするときには内視鏡手術が必要です。
※手術が必要となる場合には、適切にご対応いただける病院をご紹介します。

好酸球性副鼻腔炎

慢性副鼻腔炎のひとつで、近年増加している難治性の副鼻腔炎です。好酸球性副鼻腔炎では鼻の中に沢山の鼻茸ができ、何度も再発する特徴があります。はっきりした原因は不明ですが、20歳以上で気管支喘息やアスピリン不耐症の方によくみられ、国から「難病指定*3」されている病気です。
*3(参考)好酸球性副鼻腔炎|難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4537

主な症状は黄色いネバネバした鼻水、鼻づまり、嗅覚障害、鼻水がのどに落ちる、頭痛・眉間や頬の痛みなど慢性副鼻腔炎と同様です。難聴や喉の痛みを伴うこともあります。
軽症の場合は薬物療法による対症療法を基本としますが、鼻茸が大きくなり生活に支障を来してきたときには、内視鏡手術を行います。
※手術が必要となる場合には、対応病院をご紹介します。
ただし、手術で除去しても鼻茸が再発しやすい特徴があるため、薬物療法と手術を組み合わせて行うことで生活の向上を図ります。新しい薬剤も出てきているので(継続診療は必要ですが)手術を行わずに症状をうまくコントロールすることも可能になってきています。

歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)

上の奥歯の虫歯放置や歯周病など口腔トラブルが原因となり、上顎洞に炎症が生じることで発症する副鼻腔炎です。上の歯の根っこが上顎洞に接している場合で、歯の神経を抜いている(失活している)人によくみられます。
主な症状は、頬の痛み(歯の痛み)・黄色や緑色の鼻水・鼻水がのどに落ちるなどです。
問診、内視鏡などによる鼻の中を観察(視診)のほか、診断にはCT検査が必要となります。当院では「耳鼻科用CT」を導入しておりますので、自院で検査可能です。
軽症の場合は、耳鼻咽喉科では抗生物質の内服など薬物療法を行い、抜歯など歯科の先生と協力しながら治療を行います。重症の場合は内視鏡手術を要することが多くなります。
※必要に応じて、対応病院や歯科医院をご紹介します。

鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)

鼻を分けている真ん中の仕切り壁「鼻中隔」が曲がっていることにより、鼻づまり・鼻出血・口呼吸・いびきなどの症状が現れる病気です。
曲がる原因には、鼻中隔を構成する骨と軟骨の成長スピードが異なることであり、成長の遅い骨に位置を合わせるために軟骨が弯曲すると考えられています。

日本耳鼻咽喉科学会によると、鼻中隔が曲がっている人の割合は、子どもの70%、大人の90%と高く、ほとんどの人が大なり小なり曲がっています。しかし、鼻中隔が曲がっていても鼻症状がなければ、治療する必要はありません。
鼻中隔の曲がりが強く、日常生活に支障を来すほどの鼻づまりがあるときには、鼻の中から曲がった鼻中隔を除去する手術を検討します。ただし、鼻中隔は思春期まで盛んに発育するため、通常手術は成人以降に行われます。
※手術が必要となる場合には、対応病院をご紹介します。
風邪やアレルギー性鼻炎でもないのに、鼻づまりが強い場合には一度耳鼻咽喉科を受診されると良いでしょう。

鼻茸(鼻ポリープ)

副鼻腔の粘膜が炎症によって腫れて垂れ下がり、キノコが生えているように見える状態のことを「鼻茸」または「鼻ポリープ」と呼びます。
喘息の持病をお持ちの方は、喘息に合併する難治性の「好酸球性副鼻腔炎」として鼻茸の多発がみられることがあります。
鼻茸ができると、鼻づまりやにおいを感じづらくなる症状がみられます。重症化すると、においや味が全く分からない、睡眠障害・集中力低下など日常生活に支障を来してくる場合があります。診断は内視鏡や鼻鏡で鼻の中を診ることにより可能です。
少量のマクロライド系抗菌剤の内服により鼻茸が縮小する場合もありますが、消失させるためには切除手術が必要となります。

嗅覚障害(きゅうかくしょうがい)


「におい分子」が鼻の最上部にある「嗅細胞(きゅうさいぼう)」に到達し、神経を介して脳がにおいを認知することで、人は「におい」を理解します。

嗅覚障害では「においを感じ取りにくい」「全く感じとれない」といった症状がみられます。においの伝達経路での障害が原因となり、障害の要因から3つに大別されます。

  1. 呼吸性嗅覚障害
    嗅覚障害を訴える人の約半数を占める原因。アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎・鼻中隔弯曲症などにより、においセンサー(嗅粘膜)までニオイ物質を含んだ空気が届かないことが原因となります。
  2. 末梢性嗅覚障害
    風邪やインフルエンザなどウイルス感染・薬剤の影響・頭部の外傷などにより、においセンサー(嗅粘膜)が障害を受けたり、末梢神経の嗅神経が障害を受けたりすることが原因です。嗅覚障害の約2割は感冒後とされていますが、ウイルスなどによって嗅粘膜のにおいを感じ取る「嗅細胞」自体がダメージを受けると、高度な嗅覚障害がみられ、元に戻りにくいことがあります。
  3. 中枢性嗅覚障害
    脳挫傷(のうざしょう:脳の打撲)や脳の病気(脳腫瘍・脳出血・脳梗塞)・パーキンソン病・アルツハイマー型認知症などにより、におい情報を処理する脳が障害を受けることが原因となります。

嗅覚障害の検査は、鼻の中の観察や採血、CT検査などを行い、総合的に判断します。障害の程度は何種類かのにおいを嗅ぐ、基準嗅覚検査で評価します。当院ではこれらの検査を行うことが可能です。
嗅覚障害の基本治療は、まずは原因となっている病気があればその治療を行うことです。しかし、適切な治療を行っても嗅覚が戻らないことも多く、新型コロナウイルス感染の影響もあり、慢性的な嗅覚障害への治療が注目を浴びています。
近年、嗅覚障害に対して嗅覚のリハビリテーションを行うことで、においの改善の確立を上げることができるという報告がありました。当院では慢性的なにおいの障害について、嗅覚リハビリテーションの導入を行っています。においの症状でお悩みの方はぜひご相談ください。
嗅覚の治療は開始が早い方が有利であるという報告もありますので、においを感じなくなったら、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。

<参考:新型コロナウイルス感染症と嗅覚障害に対する学会の報告>
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、発症早期に嗅覚障害や味覚障害が発生することが知られています。
2021年7月に日本耳鼻咽喉科学会から日本国内での調査結果(第一弾)が発表されました。
報告によると、新型コロナに感染した約57%の方に嗅覚障害、約40%の方に味覚障害がみられ、これらの障害発生は鼻づまり・鼻水・くしゃみ・鼻の痛みに関係した結果となっていました。また、発症後1か月後の改善率は嗅覚障害で約60%、味覚障害で約84%と大半の方は改善傾向にあったと報告しており、これは海外での報告と一致していました。ただし、においの症状が残る方がいらっしゃることも事実です。においが戻らない場合は精査のうえで薬物療法、においのリハビリテーションなどの治療が検討されます。

(参考)新型コロナウイルス感染症による嗅覚、味覚障害の機序と疫学、予後の解明に資する研究成果の発表|日本耳鼻咽喉科学会
http://www.jibika.or.jp/media/pressrelease/2107_covid-19.html

鼻せつ(鼻のおでき)


鼻の表面や鼻の入り口(鼻の中の鼻毛が生えている部分)にできる膿の溜まった赤い腫れのことで、いわゆる「おでき」の一種です。
おできは、5mm~1cm程度の大きさになります。
主に鼻の穴を指でいじったり鼻毛を抜いて傷を作ったりすることによる細菌感染が原因です。痛みが酷く、高熱が出る場合もあります。重症例では腫れが広がり、鼻づまりや顔面痛・頭痛を伴います。
抗生物質の軟膏を塗り、そっとしておけば数日で改善が期待できますので、気になるかもしれませんが、爪の先でひっかくなどしないように注意しましょう。
また、糖尿病など全身疾患がある方は、こじれやすい傾向にあります。

鼻前庭湿疹(びぜんていしっしん)


鼻の入り口(鼻前庭:鼻毛が生えている部分)の皮膚が荒れることによりできる湿疹です。かゆみ・乾燥感・痛み・軽い出血などの症状がみられます。
湿疹の原因となるのが、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎です。常に鼻水が出て鼻粘膜が湿っている状態のとき、頻繁に鼻をかんだり指でいじったりしていると、粘膜がただれて、黄色ブドウ球菌による細菌感染が起こり、湿疹ができやすくなります。
湿疹範囲が狭ければ、自然治癒することも可能ですが、炎症が進んでいるときには抗生物質入りの軟膏を使用します。また、鼻水が止まらないときには、抗アレルギー薬の服用などで鼻炎治療も並行して行います。
なお、鼻をいじることで指に病原菌が付着して、その指でほかの皮膚を触ると、とびひ(伝染性膿痂疹:でんせんせいのうかしん)となる場合がありますので、酷くなる前に耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。

鼻腔異物

鼻の穴に異物が入ることにより、悪臭のする膿のような鼻水や鼻血・頭痛・発熱など副鼻腔炎に似た症状が現れます。
主に5歳以下のお子さんに多くみられ、好奇心から鼻の中におもちゃ(ビーズ・BB弾・消しゴムなど)を入れたり遊んでいて誤って入ってしまったりするケースがほとんどです。
内視鏡などでしっかり位置を確認しながら、特殊な鉗子(はさみのような形で物をつかむ器具)を使って、異物を除去します。通常、異物がなくなれば、症状の改善が期待できます。
ただし、磁石やボタン電池などは粘膜損傷の恐れがあるため、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診されると良いでしょう。

鼻出血(鼻血が出る)


お子さんの鼻血は季節に関係なく、のぼせたときや興奮したときに起こりやすく、ほとんどが鼻の入り口付近(キーゼルバッハ部位)からの出血です。

(図)キーゼルバッハ部位の位置

キーゼルバッハ部位には毛細血管が沢山あるため、ぶつけたりこすったりするだけでも簡単に傷つき、細い血管が破けます。
特に、よく鼻血を出しやすいお子さんでは、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎や風邪による急性鼻炎などの病気が隠れていることがあります。鼻の病気によって鼻の中がかゆくなり、つい手でいじってしまうから出血してしまうのです。

一方、大人では空気の乾燥がみられる12月頃や1日の寒暖差が大きい3~4月頃に鼻血が出やすく、中でも60代以降の高齢者に多い傾向です。
ほかに、抗血栓薬(ワーファリン)や血小板の働きを抑える薬(アスピリン)、妊娠や月経、鼻の中にできた腫瘍など、鼻以外の全身的な問題が原因となります。

鼻出血は10~15分程度、鼻を指でつまみ圧迫をしていれば、ほとんど止まります。
しかし、鼻血が止まらない・止まっても繰り返して鼻血が出る場合には、全身疾患や大きな血管から出血の可能性があるため、病院で処置した方が良いでしょう。すみやかにご受診ください。

鼻血の正しい応急処置方法

  1. 椅子に座って、やや下を向く
  2. 小鼻(左右の鼻の膨らみ)をつまんで、10~15分安静
    ※その際、鼻を氷のうなどで冷やすと、より効果的
(図)鼻血の正しい止血法

<止血のポイント>

  • 慌てずに両方の小鼻をつまむように、外側から押さえた方が早く止まる。
    難しいときには、血が出ている方の小鼻を横から強く押さえたままにする。
  • 顔を上に向けて鼻を押さえる・横になる・首を後ろからトントン叩く・ティッシュペーパーなど詰め物をこまめに交換するなどの行為は、止血にならずNG!
  • こまめにティッシュ交換(入れ替え)をすると、粘膜が傷つき出血しやすい。余計に血が止まりにくいので、なるべくティッシュは鼻に詰めないようにする。
    詰めるときには、少し湿らせた脱脂綿などにして、一度詰めたら血が止まっていると感じても、20~30分は抜かないようにする。

鼻腔腫瘍/副鼻腔腫瘍(びくうしゅよう・ふくびくうしゅよう)

鼻腔腫瘍および副鼻腔腫瘍とは、簡単に言えば「お鼻のできもの」のことです。
鼻腔や副鼻腔にできる腫瘍は片側(一側性)であることがほとんどなので、鼻水や鼻づまりなどの症状も片側のみ現れます。
腫瘍には良性と悪性があります。
当院では鼻鏡や内視鏡カメラなどで腫瘍を詳しく観察して、診断につなげています。必要に応じてCT・NRI検査を行うことがあります。

良性腫瘍

乳頭腫、腺腫、血管腫、軟骨腫、奇形種などがあります。
鼻づまりや鼻水が主な症状で、進行すると腫瘍表面から出血しやすくなるため、鼻血がみられます。腫瘍が目の周りに波及すると、涙が出やすくなったり眼球が飛び出たりする可能性もあります。治療には摘出手術が必要です。
また、良性腫瘍でも悪性化することがあるので、速やかな手術が望まれます。
なお、術後も再発することがあるため、長期的な経過観察が重要です。
※必要に応じて、対応病院をご紹介します。

悪性腫瘍

鼻腔・副鼻腔の悪性腫瘍は中年以降(特に60代)によくみられ、近年は副鼻腔の中でも上顎洞以外のがんや鼻腔に発生するがんが増加傾向にあります。
しかし、悪性腫瘍でも初期では、良性腫瘍や炎症性の疾患と同じような鼻づまり・鼻出血などの症状となるため、受診につながらず、腫瘍が進行してから見つかることがあります。特に副鼻腔にできる腫瘍は症状が出にくいので、注意が必要です。
「片側の鼻づまり」や「鼻水に血が混じる」という症状は、鼻腔や副鼻腔の悪性化症状でもあるので、念のため一度ご受診されると良いでしょう。
治療は、放射線治療・抗がん剤治療で腫瘍を小さくしてから、手術することが基本となります。がんが小さい場合には、手術せずに放射線治療と抗がん剤だけで良いケースもあります。
※必要に応じて、対応病院を紹介します。

院長からひとこと

たとえば「鼻水が出る」という症状でも、その原因となる病気は多様です。
まずは診断を正しく行わないと、正しい治療に結び付きません。
当院では高精細な内視鏡カメラやCTを用いた診断が可能です。適切な診断を行い、それに基づいた適切な治療を行うことで、患者さまのより良い生活へのお手伝いができれば幸いです。
また、鼻の慢性的な症状についても治療可能な病気が多く存在します。
近年注目されている「においの治療」について、当院ではにおいの種類や強さを調べる「基準嗅覚検査」を行うことができます。検査結果に基づいて、アロマを用いた「においのリハビリテーション」を含めた適切な治療方法を選択し、治療効果を確認することができます。お困りの方はぜひご相談ください。